認知症

認知症

ご存じの通り、日本はかつてどの国も経験したことのないような高齢化社会を迎えています。平均寿命が延びた中、高齢になってからどのように生活していくかが、今後非常に重要なポイントとなるでしょう。

他人の援助を必要とせずに自立した生活を営むことができる期間を「健康寿命」と呼びますが、その健康寿命に大きく影響を与えるのが認知機能です。認知機能とは、物事を記憶することや判断する能力、時間や場所・人などを認識する能力で、それらが障害され日常生活に支障をきたすような状態を認知症といいます。初期では、単なる物忘れと症状がよく似ていますが、大きく異なる点は、体験したことの全てを忘れてしまい、もの忘れをしている自覚がないことです

今まで普通にやれていたことが急にできなくなった、通い慣れていたはずの道がわからなくなった、同じことを何度も繰り返し話したり聞いたりするようになった、こうした「物忘れ」には、単なる老化による良性健忘だけでなく、認知症の初期段階でも認められることがあります。
そのため、鑑別をつけるためにも一度当クリニックの診察をお受けになることをお勧めいたします。CTやMRIといった検査が追加で必要な場合は、他院にて受けていただくことになります。

認知症のタイプ

認知症の原因はさまざまですが、主に4つのほどあるといわれています。ただ全認知症患者様のうち60~70%はアルツハイマー型認知症で、約20%は脳血管型認知症と言われています。つまり、認知症の8割近くがこの2大疾患で占められているといえます。

アルツハイマー型認知症 アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ(ベータ)などの特殊なたんぱく質が脳に蓄積し、神経細胞が壊れて減ってしまうために、脳の神経が情報をうまく伝えられなくなり、機能異常を起こすと考えられています。
また、神経細胞が死んでしまうことで臓器でもある脳そのものも萎縮していき、脳の指令を受けている身体機能も徐々に失われていきます。アルツハイマー型は認知症患者の中でも一番多いタイプで、男性よりも女性の割合が高いです。
脳血管型認知症 脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳血管性の疾患によって、脳の血管が詰まったり出血したりして脳細胞に酸素が十分にいき届かなくなり、神経細胞が死んでしまうことによって発症するタイプの認知症です。
レビー小体型認知症 レビー小体(神経細胞にできる特殊なたんぱく質)が脳の大脳皮質(物事を考える場所)や、脳幹(生命活動を司る場所)にたくさん認められる疾患です。レビー小体が多く集まっている場所では、情報をうまく伝えられなくなるため、認知症が起こります。幻覚や体の動かしにくさ(パーキンソン病症状)が特徴です。
前頭側頭型認知症 頭の前部にある前頭葉と、横部にある側頭葉が萎縮することによって起こるタイプの認知症です。比較的若年に発症する認知症です。

認知症の治療法

認知症を治癒させる方法というのは、現在のところ確立されていませんが、他の病気と同じように早期発見・早期治療が重要で、早ければ早いほどその進行を遅らせられるようになります。治療法は認知症のタイプによって異なりますが、薬物療法と非薬物療法があります。

薬物療法

アルツハイマー型認知症の脳内で活性が低下した神経伝達物質の働きを高める薬物を用いて、認知機能低下の進行を抑制します。また、対症療法として周辺症状(不安、焦り、怒り、興奮、妄想など)を抑える薬剤があります。
脳血管型認知症では、脳血管障害の再発によって悪化していくことが多いため、「再発予防」が重要です。脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などをきちんとコントロールするとともに、多くのケースで脳梗塞の再発を予防する薬が用いられます。

非薬物療法

薬物に頼らない方法で脳を活性化させ、残っている認知機能や生活能力を高めていく治療法です。認知症と診断されても、患者様にできることはたくさん残っています。使わない機能は身体に限らず、脳や神経でも徐々に衰えていきますが、意識して使うことで活性化され、機能は維持・向上されていきます。
認知機能低下に対するリハビリテーションはさまざまなものがありますが、専門的なリハビリテーションでなくとも、運動・家事・趣味・おしゃべりなどでも十分効果があると思います。なかなか活動やリハビリテーションの機会がない場合は、介護保険サービスの利用をご検討ください。また、専門的なリハビリテーションに関してご興味があれば、診察時にお尋ねください。